バハオラの宣布

 

バハオラの宣布

世界各国の国王、為政者への書簡

 

「地上の全人類に予言されていた時代が今こそ到来した」

 

1967

バハイ世界本部(ハイフア)

 

 

我は、世界中のためになることと、世界中の国の幸福を願っているにすぎない。然るに、人々は我を不和と動乱を引き起こす者であり、鎖につなぎ追放するに値する者であるとしている。 ...すべての国が信仰において一体となり、すべての人々が同胞として一つになること、人類間の愛情と統合のきずなが強められること、宗教間の相違が消え、人種の差別がとりはらわれることなど、これらのどこが害になるというのか。むしろ、これらが実現されれば、無益な争いや、破滅を招く戦争は終り、やがて最大の平和がくるであろうに、国王や為政者たちは人々の助けになることよりも人類を破壊する手段のために国の財宝を惜しみなく浪費しているのである。 ...このような争い、流血、不和はなくさねばならない。そして、すべての人々は、一つの民族、一つの家族のようにならねばならない。 ...誇りは自国を愛する者にあるのでなく、人類同胞を愛する者にこそあるのである。

 

 


【目次】

 

まえがき

 

世界各国の国王、為政者への書簡           5

すべての国王、為政者へ                   7

ナポレオン三世へ                       19

アレキサンター二世へ                     27

ヴィクトリア女王ヘ                       33

ウィルヘルム一世へ                      39

フランシス皇帝へ                        43

トルコ皇帝アブドル・アジズヘ                 47

イラン国王ナセル・ティンヘ                  55

アメリカの為政者へ                     61

各国の国民選出の議員へ             65

宗教界の指導者への書簡              69

すべての宗教界の指導者へ                71

法王ピウス九世へ                       81

各宗教の僧侶と信者たちへ                  87

人類への重大な告知                 107

 

 

序 言

 

およそ百年前、バハイ信教の創始者バハオラは世界中の国王や為政者、宗教界の指導者、それに一般の人々に対し、長い間約束されていた世界平和の時代がついに到来したと、明確に、分りやすく説明しました。そして、自分こそは人類の間にみられる憎しみや敵対心を生む現在の制度を改め、神の望まれる世界秩序の精神と形態を創るために神が遣わされた使者であると宣言しました。

 

当時、各国の君主たちは非常に大きな権力と武力をもち、地上の大部分を支配していました。バハオラは自分の伝えた教えのために故国ペルシャを追われ、当時絶対的権力をもっていたオスマン・トルコ帝国に囚われの身となりました。バハオラはこのような境遇の中で世界中の為政者に書簡を送ったのでした。国王たちや法王に送られたこれらの書簡は各人の手元に届けられたのですが、そのほとんどは無視されたり、拒絶されたりして、メッセージにこめられた有益な助言や忠告はまったくきき入れられませんでした。そればかりか、書簡を届けた者が捕えられ残酷な拷問にあい殺害されたりもしました。

 

バハオラは当時の為政者たちが自分たちの支配による栄華に酔いしれるあまり、自分自身の利益になることも見分けられない状態にあることを見て、「...人類を分裂させ、苦しめている争いは日増しに増大している。悲しいことに現在の秩序は欠点に満ちており、いまや迫りくる変動と混乱のきざしは明白である」と告げました。彼はまた、多くの支配者たちがその地位を失い、世界中の人間が受けなければならない神の懲罰の悲惨な様子について述べた。

 

次にやってくるものについて、バハオラは「今の時代の秩序は間もなく取り払われ、その代りに新しい秩序がしかれるであろう」と述べています。

 

バハオラは1892年にバハイ信教の聖地イスラエルで没しましたが、その後、この古い秩序の消滅は止まるところを知らないといえます。パハオラの世界秩序の基本的な救えは人類の統合です。「おお人の子よ、神の教え、神の宗教をおしすすめる第一の目的は人類の利益を守り、人類の統合をなしとげることである」と彼は述べています。また、「人類の福祉、平和、安全は、人類の統合が確立されぬ限り、決してなし遂げられない」と忠告しています。この統合こそがバハオラの告げた彼の使命であり、バハイ活動の目的でもあります。そのバハイの大要と機構は、バハオラの曾孫で、バハイ信教の守護者であるショーギ・エフェンデイの書いた次の文章の中にみられます。

 

「バハオラによって示された人類の統合とは世界政府の樹立を意味する。ここではすべての国家、民族、種族、階級は緊密に、恒久的に一つに結ばれます。各国の議会の自治権が認められ、そこでの個人の自由や発議権も明確、かつ完全に守られます。この世界政府について具体的にいうと、まず国際立法院があります。これは世界中の人類の信任をえた人々からなり、各国のあらゆる資源を管理し、必需品の供給、人種、国家間の関係の調整に必要な法案を制定します。つぎに国際行政院は国際警察軍に支えられ、国際立法院によって決定されたことを実行し、制定された法律を適用し、そして世界政府の組織的な統合を守っていきます。国際司法院はこの国際機構を構成している各国家間に生じた紛争に対して、強制的、最終的な判決を裁定し、発効させるのです。世界通信網も案出され、それが全地球に行きわたり、各国間の障壁、制限をとりはらい、驚くべき速さと完全な規則性をもって働きます。世界政府の首都は世界文明の中枢部となり、生命力のある統合の力がここに集約されます。さらに、ここから強力な影響力が放散されます。国際共通語が、新しく作られるか、あるいは現存の言語の中から一つを選んできめられ、各国で母国語につぐ補助語として教育の場で教えられます。世界的に統一された文字、世界的に統一された通貨、共通度量衡などは、人類、国家間の連絡や理解を容易にし、促進するでしょう。このような世界的規模の社会においては、人間の生活で最も大きな二つの力である科学と宗教は一致し、調和を保ちながら発展していくでしょう。このような制度のもとでは新聞は人間全体の種々の意見、考え方を十分に表現します。新聞のもつ利点が我的にも公的にも悪用されることはなく、たがいに争う政府や国民にも影響されないでしょう。世界中の経済資源も組織化され、原料資源は開発され、十分に利用され、市場もまた調整されて大きくなり、生産物の分配も公平に行われるでしょう。

 

国家間の競争、憎悪、陰謀はなくなり、民族間の憎悪、偏見も協調の態度にかわっていくであろう。宗教間の争いの原因は永久になくなり、経済上の障害、制限も完全に消えてゆくであろう。そして各階級間の極端な差も除去されるであろう。一方では貧困、他方では我有物の莫大な蓄積ということもなくなる。戦争に費やされる経済的、政治的な膨大なエネルギーは、人間の発明と技術開発の拡大、全生産高の増大、疾病の根絶、科学研究の推進、身体的健康水準の上昇、人間頭脳の明晰化と洗練、未知の資源の開発、その他全人類の知的、道徳的、精神的生活の鼓舞に要する他の要素の助成、これらの目的に集中されねばなりません。

 

世界政府とは、全地球を支配し、想像を絶する莫大な資源に対して絶対的な権限をもち、西洋と東洋の考え方を一つにまとめて新しいものを造り出し、戦争や不幸の原因をなくし、地球上の利用しうる資源の開発に力を入れるものです。そこでの軍隊は正義の僕です。これらのすべての人々はただ一つの神を認め、神の啓示に忠誠を誓います。これこそが、人類が生命の統合力に動かされて進んで行くべき目標なのです。

 

バハオラが告げた言葉は、希望や愛に満ちた実際的な再建のための言秦です。今日われわれは祖先がバハオラの呼びかけを拒絶したために生じた苦々しい結果に悩まされているのです。今や新しい政者や新しい人々の時代に変りました。この人たちはバハオラの言葉に耳を傾け、目前の破局をさけるか、やわらげてくれるでしょう。このことを願いながら、また、こうすることが神聖な義務であると考えて、バハイ信教の世界運営機関であるこの万国正義院は、再びその書簡からいくつかを選び、百年前の力強い呼びかけの真髄をここに宣布する次第です。同じように世界中のバハイ信徒たちもこの百余年、自分たちのまわりの人々にこの新しい神の導きと愛を伝えようと、希望と信念とをもって全力をつくしているのです。そして、これらの努力がけっしてむだにはならないと確信しております。

 

イスラエル ハイファにて、1967年