バハイの聖約

大聖約

バハオラによって設立されたバハイ共同体が、140年以上、分裂や分派とは無縁に今日の世界的発展にいたることができたのは、聖約というものがあったからである。
聖約とは一般的には、契約という意味である。宗教上では精神的な契約を意味し、それに忠実であればすばらしい結果が保証され、それを破れば悲劇的な結果がもたらされるというものである。
過去の宗教の聖典は、その契約を守ろうと努力した人びとの生涯とそれにまつわる歴史的事件を述べたものである。初期の聖書は旧聖約、新聖約とよばれた。聖書の大部分は、モーゼまたはイエスが教えた聖約に対する義務を理解しようとつとめた人びとの年代記なのである。
聖約は、人間が大教育者(神の顕示者)をとおして、神と関係をむすぶ手段である。神はつねに人間を援助し、指導してゆくと約束した。この約束は大聖約とよばれる。
モーゼ、仏陀、イエス、モハメッドなどは、すべてこの大聖約を果たすために下された。おのおのの大教育者は、信者に自分のあとに出現する大教育者を受け入れるように教えた。これも大聖約のひとつの表現である。

小聖約

聖約のもうひとつの面は、小聖約とよばれるもので、大教育者の後継者に関して、大教育者と信者が交わす契約である。大教育者が任命した後継者を受け入れれば、共同体は和合を保って発展していくが、そうでなければ分裂し、その力は弱まってしまうという約束である。
この小聖約というのは、バハイの聖約を意味する。バハオラの死後、後継者としてアブドル・ババを信者が受け入れるという契約である。バハオラは、アブドル・バハを聖約の中心、バハイ共同体の和合の軸と定めた。 以前の宗教制度と異なり、バハイの聖約はアブドル・バハの死後も拡大された。つまり、かれは遺訓のなかで、ショーギ・エフェンディをバハイ共同体の守護者に指定したのである。そして、かれの死から6年後の1963年には、バハオラが定めた万国正義院が設立された。万国正義院は、つぎの大教育者が出現するまで、全世界のバハイを指導してゆくことになっている。

バハイ聖約の目的

バハイ聖約の目的は、バハイのエネルギーが争いや論争に浪費されずに、精神的な成長に用いられるように和合を保つことにある。精神的に成長するためにはエネルギーが必要である。もしバハイのエネルギーが憎しみや嫉妬や羨望や争いに向けられるならば、和合された共同体を築きあげるエネルギーはほとんど残らないであろう。
この聖約がなかったならば、一日のうちに何百という分派が生じてくることはたしかである。バハイ共同体は、ひじょうに異なった背景をもつ人びとから成っているため、聖約がなければ、和合を保って行くことはできないであろう。 多種多様な民族や文化を背景にもつバハイたちが、お互いに理解しあい、団結して新しい世界秩序を建設できるのは、バハオラの力とその聖約の力にほかならないのである。
バハイ聖約には、これまでにはなかった特徴がある。それはさまざまな人びとを引きつけ結びあわせる顕示者の和合力を制度化したことである。一般に、学者や知識人は、顕示者の力は神からきたとは言わないのであるが、イエスや仏陀やマホメットのような歴史的人物は、ふつうの人ではできない方法で人びとを引きつけ、心を変えさせる力をもつことを認めている。 以前は、顕示者が亡くなった後、その力は消滅し、信者間にあった和合力は急速に弱まっていった。そして、和合の中心がなくなったために不和が生じ、分裂がはじまったのである。
しかし、現代はじめて顕示者バハオラの力は、聖約により、最初はアブドル・バハ、つぎに守護者ショーギ・エフェンディ、最後は万国正義院へとつづいて制度化された。

聖約の力が示された世界大会

1963年に選出された万国正義院のメンバーが、ロンドンの第一回バハイ世界大会で紹介されたとき、全世界から集まってきた7千人のバハイは、万国正義院のなかに生きつづける和合力を感じて感謝とよろこびであふれた。 それは、苦難と悲劇と犠牲の連続であった最初の百年を乗り越えたという歓喜と安心の瞬間であった。バハイたちは、バハオラの世界秩序のなかに息づく聖約のおどろくべき力を目の前に見たのである。こうして史上はじめて、顕示者の和合力の制度化が成功したことが示された。 それから19年後、バハオラの没後百年にあたる1992年に、第二回バハイ世界大会が開かれたとき、世界の隅々から3万人のバハイがニューヨークに集まった。そこからふたたび聖約の力がもたらした和合の力が衛星放送により50カ国に示されたのである。
ジョージ・ブッシュ米国大統領もこの大会につぎのようなメッセージを送ってきた。
「すべての宗教に寛容であること、人類を和合させること、偏見をとり除くこと、男女の平等を受け入れること、世界平和を達成することなどのバハイの教えは、すべての善意の人びとの称賛と支持を受ける原則であります。……全世界に、これらの基本的な原則が実現されますよう、わたしも皆さんと共にお祈りいたします」
この1992年には、米国大統領の例にも見られるように、バハイだけでなく、さまざまな国の首脳や高官たちがバハオラの逝去百年を祝う式典に参加したり、メッセージを送ってきた。ブラジルでは国会が2時間にわたってバハオラのために式典を行った。